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人間のアシェイムド – 感想

目次

感想

平成を生きる主人公が昭和にタイムスリップするところから物語は始まります。
現代に戻る条件は「花言葉の意味を理解し、偉人=対象者の史実に基づく死亡日まで共に生きる事」。
主人公は、対象である太宰治と共に歩んでいくことになります。

読んだ第一印象として、めちゃくちゃ素直な感情表現の主人公だ、と思いました。
物語冒頭、主人公のイライラしている感じがダイレクトに伝わってくるのですが、それもネチッとした苛立ちではなく、サバサバとした印象の苛立ち。
めちゃくちゃに怒っているので、主人公には申し訳ないけどややクスッとし、コメディ味を感じながら読み進めていきました。

最初の頃は、主人公の太宰に対する行動や思いがやや唐突、という印象を受けたのですが、主人公を知っていくごとに、すべての行動に納得がいくようになります。

明るい主人公視点で描かれる物語のそこかしこに、ほのかに暗い何かが見え隠れしていて、それをほんのりと感じていると、なるほど、と頷きたくなる明確なバックグラウンドが現れる。そのじわじわと出していくテンポがとてもよくて。
主人公に感じていた唐突感が、逆にいいんです。普通の人付き合いみたいに、徐々に相手を知っていく感じがして、リアルで楽しかったです。

たくさんのキャラクターが出てきますが、どのキャラクターも人間臭く、どこか変わっていて、でも普通らしいところも持っていいて、とても魅力的です。

長編だと読者毎に〝この回が好き〟という部分があると思うのですが、私は「蔓の隠し事」と、「今日だけ、僕らは皆別人」から「決して、諦めない」の話がとても好きでした。

勢いのある作品なので、時間があるなら一気にバーっと読みたかったのですが、ちょこちょこ読んでおりました。
可能な方は一気読み、おすすめです。

作品情報

タイトル

人間のアシェイムド

作者

陸前フサグ

ジャンル

ヒューマンドラマ

状況

1巻完結
2巻連載中(2020/11/12現在)

あらすじ

 2018年、東京。
 平成を生きる生出要(おいでかなめ)は、旅行中に見知らぬ親父から趣味の手伝いをしてほしいと「ムラサキケマン」の花を持たされ、玉川上水に突き落とされてしまう。

 すると、昭和5年の東京にタイムスリップさせられていた。

 現代に戻る条件は「花言葉の意味を理解し、偉人=対象者の史実に基づく死亡日まで共に生きる事」。
 要の対象者は、恥の多い人生を送った破壊を望む人気作家「太宰治」だった。

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